ここ2、3日は朝寒くて自転車で走るのが辛くなってきましたね、今日も真冬用の
グローブで来たけど指先が痛くなってきました。
今回ご依頼を受けました手組みホイールは、本来は完組ホイールに使用している
ハブを使っての組み立てです。
Ritchey WCS APEX に使われているファントムフランジハブとやら。
このハブ、工具いらずで簡単にバラすことができます。
一見ノンドライブ側はストレートプルのスポーク仕様かと見えますけど
実は一般的なベントスポークを使います、ここが工夫だと思うんですけど
簡単にシャフトサブアッセンブリーがハブボディから抜けることで
長いスポークをフリーボディ側から挿入することができます。
リッチーサイトを見ると
「最大のパフォーマンスと信頼性を実現するために、より強力で実績のある
Jベンドスポークを使用します。」と書かれておりこだわりがあるようです。
このファントムフランンジというやつは、ホイール組み立て自体は
特殊なわけではありませんが、下準備のスポーク長の算出に苦労します。
スタンダードなハブなら何本組にするかで交差する2本のスポークの角度が
決まりますが、この変則的なスポーク孔だと角度がわかりません。
幸いリッチーサイトでPDFで図面を提供してくれているのでこれを使って
角度を調べます。
片側12本の通常のスポーク孔(赤丸)と比べると大体4本組と6本組の
中間ぐらい、孔が等間隔の場合だと割り切れないからそんなのないけど
無理やり表現すれば5本組ってことになります。
これでスポーク長は算出できますが、ちょっと不安なので原寸図を実測して
みたらほぼ同じ、ドライブ側の場合は車軸方向の角度成分はほぼ無視できるので
間違いはないでしょう。
これでスポークが発注できます。
当店、今年で開店から 9年目になるんですがこれだけの期間お客様からの
手組ホイールのオーダーを受けていると700cのアルミリムについては
現行品で発売されているモデルはほぼ全種類組立たてたと思います。
先日久しぶりに新しく輸入され始めた DT SWISS の R511 というリムで
手組ホイールを組み立てましたので紹介します。
このリムは RR585 の後継モデルと思われるんですが、断面を比べると
ワイドリム化されているにもかかわらず軽量化されています。
RR585 RR511
リム単体の実測重量では、RR585 が 585g(ネーミングといっしょですね)で
RR511 が 538g でしたから約 50g の軽量化はすごいです。
断面を比べるとわかりますが、ニップルで引っ張る部分の肉厚がかなり
薄くなってます。
この方法で軽量化をするために、このリムはなんと組立時に面倒臭い
ニップルとワッシャーを使うようリムの付属品にしてきました。
接触面積を増やすためのワッシャー( PHR washers )を使うことは
時々あるのでいいとしても、面倒臭いのがこの DT SWISS オリジナルの
ニップル( Pro Head nipples )です。
後、ニップルとワッシャーの接触面に DT SWISS のスタンダードグリースを
塗布しろといってます。
通常のリムの外にでる 3.2mm のスクエア部分は通常のニップルより
短くて材質がアルミなので油断するとナメそうでテンション掛けにくいので
リム内になるトルクスヘッド部分を回すように考えられているようなんですが
現時点で DT SWISS から出ている専用ニップルレンチはまだ入荷してきてません。
このニップルもまだ単品での販売はありませんからナメてしまったらアウトです。
一般工具のトルクス E-5 のデイープソケットレンチでも良さそうで用意はしましたが
今回は、ParkTool の 3.2mm スクエアの4面ホールドタイプのニップルレンチを
使って組み立ててみました。
リムが軽くなってもここで部品増やして重さはどうなのよと気になる方も
いらっしゃるかと思いますので参考までに、
実測で 32 個分の DT SWISS 真鍮製ニップルが 32g で、
このプロヘッドニップルとワッシャーの 32個分の合計が 21g でした。
ちなみに普通の DT SWISS アルミニップルの 32個合計が 10g でした。
結果、部品を増やしても軽量化には成功していますね。
無事完成しました。
替えがないニップルというのは、組み立てて久しぶりに緊張しました。
このリムやっぱり組みづらいので、プロショップで組んでもらったほうが
いいですよ。
機械好きな人間がつい魅せられてしまう物の代表格はギアで駆動するものだと思います。
裏蓋がスケルトンの機械式時計なんてずーと見ちゃいます。
自転車の駆動系はいたってシンプルな構造で作られているものがほとんどなんですが
そんな中でシマノの内装ハブギアは細かなギアの集合体で、子供の頃だったら後先考えずに
バラしたくなる代物ですね。
今回ご注文いただきましたリアホイールは、内装ギアハブでも最上位の ALFINE SG-S700 で
11 速分のギアが詰まってて、外装ギアでいうと 24x23T から 53x13T までのワイドレンジで
いろいろなシチュエーションに対応できそうです。
部品構成はハブ以外のリム、スポーク、ニップルすべて DT SWISS で統一しました。
内装ハブギアコンポを選ぶ時点で、軽量性に重きを置いているわけではないので剛性、耐久性、
寸法精度を重視して RR585 を選びました。
スポークは、CHAMPION 2.0 、ニップルはアルミを使いました。
この部品構成で約 2.5kg になりましたが、重量の多くは中央部のハブなので踏み出しの重さには
驚くような悪影響はないでしょう。
最近のハブにはグリースアップポイントが無くなってしまったので、通常はバルブホールとハブの
ロゴを合わせますが、このハブには注油ポイントがあるのでここにバルブホールを合わせて
組み立てます。
こうすることで注油時にスポークが邪魔になりにくくて作業性がよくなります。
この部品構成で 62000 円ちょっとで組めました。11速内装という他にはないメカということを
考えれば妥当な価格だと思います。